美しいフラワーアートを創作される、ニューヨーク在住のアーティスト、 Ellie Graceさんへのインタビューをお届けします。
— もうすぐバレンタインデーですが、そちらでは男性が女性に告白する日なんだそうですね?
(エリー) アメリカのバレンタインは、日本とまるで違いますよ。
日本のチョコレート屋さんに踊らされているのと違い、主には、男性が愛情表現をする日なんです。
だから、贈り物は何でもOK。もちろん一番人気は赤いバラ12本(1ダース)ですが、レストランで食事も多いです。
その日のレストランはどこもカップルだらけ。小さいテーブルがレストランいっぱいに並び、至るところ甘い雰囲気に包まれま す。
プラリと一人で入っても、きっと席はないでしょう。(笑)
おもしろエピソードとしては、パフォーマンスが好きな人は、恋人や奥さんの働いているオフィスに赤薔薇12本をバンとお届け して、驚かせるの。
周りからも「羨ましい」と言われるのを喜んだりしますよ。女性はもちろん鼻高々ですよね。最高レベルのお花は、ロングステム (茎の長さ90センチ)の赤薔薇1ダースです!素晴らしくゴージャスですよ。でも、お高い!
後は、やっぱりチョコレートも人気です。
バレンタインは、恋人だけでなく日頃お世話になっている方にも感謝の気持ちを現わす日でもあります。
学校の先生とかアパートの大家さんとか、仲良しの友人とかに。ちょこっとした小さい贈り物がいいんですよね。
ニューヨークでフラワーアレンジメント教室を始める
— ニューヨークのど真ん中にスクールを構えていらっしゃるそうですね?
(エリー) スクールとして場所を借りているところは、NYに100年の歴史を持つ「日系人会」です。
ここは、マンハッタンのどまんなか、グランドセントラル駅から5分と便利なので、とても集いやすいところです。
なので、マンハッタンの中だけでなく、電車やバスに乗って、マンハッタンの北部やNYのロングアイランド、コネチカット州、 ニュージャージー州などからレッスンに通ってきています。遠くだと、だいたい片道1~2時間のところから来られます。
— 元々、茶道や華道をやられていたとお聞きしましたが、フラワーアレンジメントを始めたきっかけはその辺りからなんでしょうか?
(エリー) フラワーアレンジメントを始めたきっかけは、(故)高峰三枝子さんがある女性誌にフラワーアレンジメントを活けているところ を読んだことから。
「最高の部屋飾りは生の花」だって。他に何も部屋には置かないって。
それで、素晴らしいアレンジが紹介されていたのを見て、素敵な生き方だなと思ったのです。
とても凛としていてセンスが抜群でした。お部屋がすっきりとしてお花が主役なんです。憧れてしまいました。
それから、フラワーアレンジメントを教えるきっかけとなったのは、なんと、「スラムダンク」なんです!(笑)
— え?漫画のスラムダンクですか?フラワーアレンジメントのシーンとか出て来ませんよね?
(エリー) そうなの。息子たちが喜んで読んでいるのを奪い取るようにして読んで、ハマってしまったんですど、バスケットボールの最後の 瞬間まで全力を尽くす姿に感動したんですよ。
今まで情熱をかけて打ち込むことのなかった自分に気づいて、「これからやってもいいんじゃないか」と思い立ったのです。
その時、目の前にあったのが大好きだったフラワーアレンジメント。友人がちょうど一生懸命になり始めてお花を仕事にすると言 い出して、、、そうしたら、私も挑戦してみたくなったのです。そこから本気で習い始めて、お教室を持ち始めました。初めは自 宅からのサロン形式でした。
— なるほど、そういうきっかけで始められたのですね。
Wellness Factoryのホームページを拝見したのですが、美容健康の方面でも、活動されているそうですね。
(エリー) 私のアンチエイジングのサイトも見てくださったのですね。ありがとうございます。
Wellness Factory(ウェルネスファクトリー)で扱うのは美容健康面が多いですが、本当のところは「心の持ち方」を提案したいという想いからなんです。
若々しくイキイキと、というテーマで、生活の全てをアンチエイジングにかけて。そういう意味では、お花を活けるのも心の若返 り、アンチエイジングにつながるんですよ。
— フラワーアレンジメントでアンチエイジング効果が出るのですか!!それは面白いですね。
(エリー) 「心の持ち方」一つで、仕草や表情が変わってきますよね。
それだけではなく、肌の状態や若さにまで影響することを経験しました。
だから、明るく元気に前向きになるメッセージを出して行きたいな、と思いました。理念は、「明るく元気にイキイキと夢をかな える実践法」です!
「人種の意識」を超えた交流
— ニューヨークから見て、日本の美的センスとか、どのように見えていますか?
(エリー) 日本は「かわいい」のが好きな文化なのかな、とお花全般から見て思います。
NYではおおらかさ、ゴージャスさなどが注目されますが、日本はこじんまりとかわいくまとまっているのがとても受けるようで すね。
また手作業(クラフトチック)が盛ん。その文化にいるとそれがいいと思うようになるのだな、と感じます。
美的センスから言えば、日本古来の奥ゆかしさから似ても似つかぬ、突拍子もないものが流行るときもありますよね。
びっくりしたのは、昔のガングロギャルとかドール人形のようなキャラクターファッションとか。。。ああいうのは、いくら何で もありのNYでも、受け入れられないでしょう。
でも、海外から見ても日本古来の色合いなどは、素晴らしく魅力的です。藍色や緋色などの色ものは、他の文化にはないですもの ね。着物の色合わせなど、芸術的なセンスがありますね。誇りに思います。
— そちらでお仕事をする上で、日本人らしい何かを期待されることはありますか?
(エリー) NYにいると、「日本人」とか「なに人」とかいう人種の意識を超えます。人種のるつぼだから、あまりにも多くの国籍の人たち が集まっているので、その人となりを見るようになります。だから「個人」に興味がありますね。
NYはコンテンポラリーアートが盛んですが、そこでは生け花が人気です。スキっとしたライン構成や少ない花でアクセントをつ けるなど、現代アートとのマッチングが面白いと見られます。
私は「草月流」生け花の師範でもあるので、特に現代的な活け方が喜ばれます。季節の枝物や花を効果的に使って、ちょっとだけ 前倒しで季節を味わいます。これを「季節の先取り」と言います。このテイストは、とても受け入れられています。
— 「季節の先取り」という感覚は、元々アメリカ人にはある感覚なのでしょうか。
たとえば2月4日は立春で、日本の暦の上ではもう春なんですよね。気温は一番寒い時期なんですけど、たしかに春の気配を 感じはじめる頃なんですよね、梅の蕾もふくらんできて、雨の匂いが変わってきたりして。つまり季節の先取りですよね。
暦ってよくできているなぁって思うんですが、アメリカには暦みたいなものはあるのでしょうか。
(エリー) 「季節の先取り」は、生け花からきています。
日本は四季折々の草花を愛でる習慣が伝統的にあり、季節の切花を家庭でも楽しむという文化があります。春夏秋冬をそれぞれ自 然の草花を通して感じるのですよね。春の桜や秋の豊かな紅葉などをお茶の間に持ち込んで楽しむのは、心豊かなことだと思いま す。
アメリカには暦という感覚はないように思います。季節を特に意識するのは、夏時間と冬時間に時計を半年に一度あわせるときか しら?(笑)あー、もうすぐ夏だー、日が長くなったわ、とか。1時間も違うと相当に得した気分になるんですよ。
でも、アメリカには楽しい季節の行事がたくさんあって、たとえば10月末のハローウィンとかクリスマスとか、その前1ヶ月ほ どは、その行事のテーマカラーの花がたくさん出回りますから、それらを飾ると季節を感じますね。
ハローウィンのパンプキンカラー(オレンジ色)などは、10月になると家の中も外もって感じで。
バレンタインやクリスマスは、赤が中心になってあちこち飾られるし、それはそれで季節の色がはっきりしていて、とても楽しい ものです。
季節の枝ものを楽しむ日本と違って、花の色合いを重視するって感じですね。
— 今後の目標を教えてください。
(エリー) 私は自他共に認める「究極の前向き」人間なんですね。めげることももちろんありますが、ヒョコッとすぐに立上がる「起きあが りこぼし」みたいな。(笑)
だから、私と集う人たちを明るく元気にする使命があるようです。神様からいただいた「恵み=グレース」だから最大限に活かし ていきたいと思います。
ワクワクすることやイキイキとなることを心に聞いて、自分ができる事を精一杯やっていきたいです。
お花やウェルネスのコミュニケーションを中心にネットワークを広げながら、もっとグローバル展開を考えています。なんと言っ てもNYという世界のどまんなかに拠点を持っていますので、英語も活かして大きく発展していきたいと願っています。
— 楽しいお話、ありがとうございました。
Profile
エリー・グレース
宮城県出身。NY在住。
The New York Botanical Garden Floral Design (NY) 卒業
School of Floral Arts(NJ) 卒業
草月流師範 (二級師範常任参与)
1999年3月~NYでフラワーアレンジメント教室開校。
アメリカ・テレビジャパンに出演、雑誌「ミセス」でフラワースクールを紹介されるなど、活躍の場を広げている。
http://www.elliesny.com/ (日本語)
http://www.wellnessfactory-ny.com/ (日本語)
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